業務系システムの第三者検証を広げよう(7)

前回は業務系システムの第三者検証サービスが業界としてなぜ認知されないかとの問いかけで終わりました。今回はそれを探ってみたいと思います。
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誰のための第三者検証か

業務系システム開発におけるSIerの役割は、お客様の要望を受けて開発することです。ところで、この「お客様の要望」をSIerはどのように解釈しているのでしょうか。機能要求・非機能要求を含めてユーザーニーズをもとにしてSIerが請け負うわけですが、お客様が要望を丸投げしている状況で要件を“正しく”かつ“的確”に仕様に落とし込み、開発する必要があります。第三者ソフトウェアテスト検証サービスは、単体・結合テストだけでなく仕様書のテスト検証などについてもお客様目線で実施し、お客様が本当に欲しいIT化を支援しています。

さて、第三者検証業界の認知度が低い要因として考えられることはIT業界の商慣習にも一因があるのではないでしょうか。以前にも何回か指摘しましたが、SIerの開発部隊が上流から下流までテスト検証を行うという図式が出来上がっています。そのためにSIerは他社が提供する第三者ソフトウェアテスト検証サービスに対して必要性を抱かないことがあげられます。 また、第三者検証の最大のメリットはお客様のIT利用=システム運用がスムーズに行われるということにあるのですが、SIerの多くは開発とテストを兼務しているため、ややもすると開発側の思考と判断でテスト項目が決まることがあります。こうしたやり方は運用後のバグ発生率を下げられない大きな要因といえます。ただし、SIerの組織の中にテスト専門の部署があって、そこが開発部隊とは別にテスト検証を行う体制が敷かれていれば別ですが。

さらに、お客様は開発およびテストすべてを含めてSIerに一括発注しています。その中で仮に第三者テスト検証を実施するとなったときにその費用を誰が負担するかという切実な問題が浮上します。お客様が第三者テスト検証の重要性を認識し、開発とテストを分離して発注するのであればSIerも納得するでしょうが、多くは一括受注したSIerの負担になります。SIerからすれば「せっかく営業したものを減らしたくない」「利益を圧迫する」という思いが強くなり、第三者テスト検証事業者を使うという意識が失われていくわけです。

一方でSIerのこんなケースも少なくありません。例えば「開発工数が延びてテスト時間が足りない」「単体・結合のテスト要員が確保できない」など困ったときに第三者ソフトウェアテスト検証会社に急遽テストを依頼するのです。実際はこうしたケースが散見されるようになりました。

そうした中で業務系システムの第三者検証業界をどう認知向上すればいいか。お客様とSIerそして第三者ソフトウェアテスト検証事業者の3者が、上流工程からプロジェクトを動かす体制を構築できるように考えを切り替える必要があるのではないでしょうか。そうしたシステム品質を維持・向上するための取組みが動いていくようになれば3者はWin-Winの関係になれるのです。でも、そこに達する道程は平坦ではなさそうです。というのも阻害要因の一つに、IT業界だけでなく発注者側であるお客様の課題が見え隠れしているのです。その点は次回に考察してみます。

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