業務系システムの第三者検証を広げよう(2)

前回は業務系システムの第三者システム検証、または第三者ソフトウェア検証のビジネスがなかなか浸透しない背景などを探ってみました。今回は業務系システムの第三者検証を進展させるために業界団体を作ろうとした人たちの活動などを追いながら第三者検証サービスが広がるにはどのような取り組みが必要かつ有効かを、数回に分けて垣間見たいと思います。
■第一回はこちら

業界としての確立を夢見て

2009年春、上場企業の品質ソリューション事業部に籍を置くI氏の発案で、業務系システムにおける第三者検証サービスの拡大と、IT分野の一つの業界として認知させる団体を作ろうと「第三者システム検証情報交換会」(以後「研究会」と呼ぶ)を始めました。取り組みに賛同する大手SIerや専業テスト会社などから最初は有志5・6名が集い、第1回目の会合を3月に開いたのです。この研究会の方針としてお互いが自由に意見を交換するブレインストーミング方式を取ることとしました。そのうえで、第三者テスト検証事業の認知度を高め、IT業界以外にも広く知られるためには何をどうすればいいのかを探っていく場としたのです。基本的に業務システムに関連するテスト事業から振れないこと、第三者検証を業界として発展させるには何が必要で、大前提となるコンセンサスやメソッドをどう確立させて行くか-などがテーマとしてあがりました。そして、これらテーマをクリアしていくことで内外への啓発活動を展開でき、ビジネスに結び付く“集団”であること、業界を超えて広く参加者を募ることを目指すユニークな業界団体を将来のあるべき姿と捉えることにしたのです。この考えは、第1回目の研究会で固まったのではなく、回を重ねるごとに芽生えていった“想い”でした。

何故に業務系システムの第三者検証にこだわったのか。I氏は「組込み系は製品ができればそれ以上の改修はない。ところが業務系のシステムは常に進化し続けている。その点を鑑みると第三者システム検証は業務系システムこそ必要で、必要とされていながら標準的な方法論が確立されていない。システム品質に基本的な方法論が確立されれば業務系でも品質が高く使い勝手のいいものが提供できる。これはITサービス業界だけでなく、お客様にとって非常に有意義な取組み」といっています。その根底には「品質を高めてユーザー重視のシステム開発を行うことでお客様のITベンダーへの信頼が高まる」との想いを持っています。実は、この想いは業務系システムの第三者システム検証を手掛けているITサービス会社の多くが持っているものだということがわかりました。その取り組みが自分たちの責任の完遂、そして利益につながるからです。

システムの品質を求めて

業務系システムの稼働対象は企業活動全般で、そういう点ではWebサイトの制作・運用も入ります。いまは、ECサイトだけでなく、コーポレートサイトにおいてもUI(ユーザーインターフェース)およびUX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)の向上が欠かせません。というのも、企業が訴えるテーマが分かりやすいサイト、印象深いサイト、見たいところにすんなり行けるサイトといった、見た目の印象や使い勝手のいいサイトが訪問者を長く引き付けることになるからです。こうしたサイトの制作にも第三者ソフトウェア検証が必要となる多くの要素が含まれています。画面遷移やシステム全体を考えることも第三者検証サービスの重要な取組みであることが研究会を通して見えてきたものの一つでした。

第2回目以降の研究会で意見を交換するうちに、避けて通れない命題として「システムの品質」が上りました。様々な意見が出てきたわけですが、その根底にあるのは、第三者検証は品質を担保する、または担保できるものなのか(品質の責任)、システム品質とは何を以って証明できるのか(品質のレベル)、世界が求めるシステム品質と日本が提供できる品質の違いはあるのか(品質の価値観)、品質管理における満足度とは何か(品質の捉え方の違い)、それはユーザーとITベンダーでどのように違うのか(品質の確認)―など課題満載での研究会スタートとなったのです。第三者システム検証(ソフトウェア検証)とシステム品質-切っても切れない関係のようです。

次回は、研究会を通してシステム品質の向上にどのように第三者検証がかかわればいいのか、また、グローバル展開を視野に入れた時に海外の品質・日本の品質をどう考えるかなどを見てみます。

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