業務系システムの第三者検証を広げよう(1)

国内の業務系システム開発における第三者ソフトウェアテスト検証サービスは、ここにきてようやくその存在がお客様に認知されるようになってきました。ただし、一般的に認知されてきているかというとそうではなく、どうしても開発側の技術者がテストも行うという構図が確立されており、第三者がテスト検証するという場面はまだまだ少ないようです。業務系システムの第三者検証が今後、広がっていくためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

業務系の第三者テスト検証に注目

日本IBMのノウハウをベースに業務系第三者検証サービスを実施していた旧CSK出身のシステム検証技術者は少なくありません。IVIAへの参加企業をはじめ、日本の業務系システムの第三者検証事業を担ってきたといっても過言ではないでしょう。米IBM社をはじめとした海外のIT会社にとって、開発と検証は同一部門または同一IT企業が行うものではないとの認識があり、開発した成果物の第三者システム検証としてビジネスが成立していました。それを国内で展開したのが日本IBMで、その事業の受け皿が元CSKだったわけです。 コンピューターメーカーや大手SIerは、独自のテスト検証ノウハウを蓄積しており、システム開発の際の単体テストや結合テスト、システムテストといった各フェーズごとにクオリティゲート(QG)を設け、そのテストに合格するよう下請けの開発会社に要請するという図式が出来上がってきました。

それにより、テスト実施部分はシステム開発の工程の中に組み込まれ、開発会社が責任を持ってテストを行うという形態を確立していったわけです。その流れで見ると、開発予算が決まっているのに第三者にテストを外注するという概念はなく、すべて開発プロジェクトの中でテストを含めて一連の流れに入れているのです。そうでなければプライムで受注したSIerの取り分が減ることになるし、お客様との交渉も煩雑になり、プライムにとって負荷のかかる仕事になってしまいます。 困ったことには、この考えはSIer側の理論でしかありません。お客様がITを利用するシーンを想定しているとは思えない動きなのです。90年代までの業務システムであれば、業務の効率化を目的にITを導入してきたお客様が大多数だったので、まだ我慢できたのでしょう。

複雑になったシステムに品質を

これまで国内で第三者テスト検証企業といわれたのは、システムハウスと呼ばれたASICなど専用チップやシステムを開発、製造していたIT会社が主でした。時代としては1970年代から1990年代でしょうか。システムハウスは自社内で開発、製造した専用チップのASICが正しく稼働するか何パターンもテスト項目を作り、検証していたわけです。テスト環境を作り、テストアプリを開発し、それを外販するようになった。組込み系のテスト検証サービスのはしりといえますが、あくまでASIC単体の動作テストで済んでいました。ところが現在は、自動車や携帯電話、ストレージなどの制御システムに搭載されるASICは、単体で稼働するだけでなく、そのデータを他のASICが利用して次の処理、制御を行うなどデータ連携が欠かせない装置となっています。これは、従来のシステムハウスの感覚から大きく飛躍した状況になっていることが分かります。

一方、業務系システムを見ると、データ連携は当然行われるのが前提でシステムが組まれています。当然、アプリケーションの単体テストは必須で、結合テストまで実施しないと品質の確保は難しくなります。ところが、開発の内容は複雑かつ高機能になり、工期は短縮傾向という中で、どのようにITベンダーが品質を確保していくかは大きな命題として立ちふさがっています。 そこで、システムの品質管理に意識の高いITベンダーは、業務システムこそ第三者検証を取り入れることで、お客様のシステム、ひいてはIT利用者の顧客満足度を高める大きな手段であるとアピールするようになりました。まだまだ一般企業の認識率は低いのですが、そうした声を上げていく、アピールしていくという活動がなければ、その先がありません。

一度システム停止などで顧客に迷惑をかけた経験のあるお客様は、テストの重要性に気付いています。なんといっても業務系システムは人命にかかわるものや社会的責任を取らざるを得ないものが少ないことと、多少のバグやシステム停止は当り前で、それによって大きな被害を被るという意識がないことが第三者システム検証市場が認知されない一つの要因になってます。でも手をこまねいていては進みません。

振り返ってみると、みずほ銀行のシステム統合の不具合、地下鉄東京メトロのPASMO読取障害、航空管制システムの不具合など枚挙に暇がない状態です。中でも2010年から2011年にかけて米国を中心にリコールの嵐が吹き荒れたトヨタ自動車の急発進という不具合問題がありました。不具合の検証をNASAが実施してシステムの妥当性を証明したのですが、第三者検証の重要性を世の中に知らしめた事案だといえます。つまり、第三者ソフトウェアの検証にはやはりプロフェッショナルの出番が欠かせないということを証明しましたわけです。IT業界でも第三者検証の重要性についてようやく高まってきたようです。

次回は、業務系システムの品質を確保するために第三者システム検証事業を認知させ、業界の一つの流れにしようと奮闘した取り組みを紹介したいと思います。

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