みなさん、こんにちは。
今回は「テスト自動化導入の流れ:計画編」についてお教えします。
前回の記事で、テスト自動化を導入することによる「メリットとデメリット」や、対象のテストに向き不向きがあることをご理解いただけたかと思います。
テスト自動化を成功させるためには、初期の計画段階が非常に重要です。適切な計画を立てることで、後の実装や運用がスムーズになり、期待される効果を最大限に引き出すことができます。
ぜひ今回の記事をご覧いただき、今後の導入の検討材料にしていただければ幸いです。
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【第2回】テスト自動化:テスト自動化を始める前に知っておきたいこと
自動化の目的を明確化
まず始めに、自動化で何を達成したいのかを明確にします。
例えば「テスト時間の短縮」や「人的ミスの削減」など、具体的な目標を設定することが重要です。
当社では、リグレッションテストに費やす時間が、より優先度の高いタスクの実施を妨げる要因となっており、本来注力すべき創造的な業務に十分な時間を確保できない状況が有りました。そこで自動化の導入を検討しました。
自動化範囲の確認
目的が分かったところで、次は「どの範囲を自動化するのか」を明確にしていきましょう。すべてのテストを自動化するのは現実的ではないため、効果が高く、実現可能な領域を選定することが成功の鍵となります。
以下のポイントを考慮しながら、範囲と優先順位を決めましょう。
- 頻繁に実行されるテストを選ぶ
繰り返し実行されるテストは、手動で行うコストが高くなるため、自動化のメリットが大きいです。特に、リグレッションテスト(回帰テスト)は優先的に自動化を検討すべき対象です。 - エラーの影響が大きい部分をカバー
システム全体の安定性に影響を与える重要な機能や、顧客体験に直結する部分を重点的にカバーすることで、リスクを最小限に抑えることができます。 - 自動化が容易な部分を優先
初期段階では、スクリプト作成や実装が比較的簡単なテストケースから始めるのがおすすめです。これにより、短期間で成果を出すことができます。 - ROI(投資対効果)を意識する
自動化にかかるコスト(ツール、開発時間、保守費用など)と、それによって削減できるコストや得られる効果を比較し、優先順位をつけましょう。
この段階で範囲と優先順位を決められると、次のツール選びも容易になります。
適切なツールの選定
範囲も絞れたところで、次に取り組むべきは「適切なツールの選定」です。テスト自動化の成功は、使用するツールの選び方に大きく左右されます。
市場には多くの自動化ツールがありますが、弊社では特にUIpath、Power Automate、Autifyといったツールを検討しました。
それぞれのツールには利点と制約があり、開発の容易さや自由度、実行時の操作性などの要素を考慮して最適なツールを選定しました。
また、自動化スクリプトは一度作成すれば終わりではなく、メンテナンスが必要です。加えて、テスト対象プロダクトの機能追加や変更に追随し、スクリプトの更新や修正を適宜行う必要があります。
スクリプトの保守体制を整え、テストケースの変更に迅速に対応できるようにすることも重要なポイントです。
自動化ツールには大きく分けてオープンソース系、ローコード系、ノーコード系の3つがあります。
それぞれの特徴を理解し、プロジェクトのニーズに最も適したものを選ぶことが重要です。
特徴 | 適用場面 | 要求スキル | |
オープンソース系ツール Selenium / Cypress | ・高い自由度と拡張性 ・詳細なテストシナリオの作成が可能 | ・開発チームでの利用 ・複雑なテストケースの自動化 | ・プログラミング言語の知識必須 ・テスト設計スキル |
ローコード系ツール UIpath/PowerAutomate | ・視覚的なフロー作成 ・中程度の開発自由度 | ・業務プロセスの自動化 ・定型的なテスト作業 | ・基本的なプログラミング知識 ・ツールの操作スキル |
ノーコード系ツール Autify | ・直感的な操作性 ・早期導入が可能 | ・シンプルなUIテスト ・非エンジニアによる利用 | ・特別なプログラミング知識不要 ・基本的なPC操作スキル |
テスト自動化の成功には、適切なツール選定と段階的な導入アプローチが不可欠です。
自動化は単なる効率化だけでなく、テスト品質の向上とチーム全体の生産性向上にも大きく貢献します。
ただし、自動化はゴールではなく、継続的な改善のプロセスの一部として捉えることが重要です。
次回は、「テスト自動化の導入の流れ:実践編」をお話したいと思います。
ご愛読ありがとうございました。