【ソフトウェアテスト入門編第4回】ソフトウェアテストにおけるV字モデルとW字モデルとは?

はじめに

システム開発や製造業のプロジェクト管理において、プロセスの可視化は非常に重要です。
その中でも、開発工程を明確に示す方法として 「V字モデル」 「W字モデル」 がよく用いられます。
しかし、どちらを採用するべきか迷うことも多いのではないでしょうか?
本コラムでは、それぞれのモデルの特徴を解説し、どのようなケースで適用すべきかを考えていきます。

ソフトウェアテストの開発工程について

ソフトウェア開発において、テストは品質を保証し、不具合を最小限に抑えるための重要なプロセスです。
特にウォーターフォール型のような開発手法では、各工程に対応したテストを実施することで、 全体の品質を確保します。

2-1. ウォーターフォール型とは?
ウォーターフォール型は、開発工程を「要件定義」から「設計」「実装」「テスト」「運用・保守」の順に一方向(滝のよう)に進める手法です。
このモデルでは、各工程を完了してから次の工程に進むため、上流工程(要件定義・設計)でのミスを早期に防ぐことが重要になります。

2-2. ウォーターフォール型におけるテストの位置づけ
ウォーターフォール型では、開発の最後に独立した「テスト工程」が設けられています。
しかし、実際には開発の各段階に対応したテストを実施することが重要です。
具体的には、以下のようなテスト工程があり、その流れを図に示します。

  • 単体テスト
    各プログラム単位(関数やモジュール)が正しく動作するかを検証。
  • 結合テスト
    複数のモジュールを統合し、連携が正しく機能するかを確認。
  • システムテスト
    ソフトウェア全体が要件を満たしているかを検証。
  • 受け入れテスト
    エンドユーザーが求める動作を満たしているかを確認。

V字モデルとは?

3-1. V字モデルの概要
V字モデルは、ウォーターフォール型をV字の形に展開したもので、各開発工程に対応するテスト工程がセットになっているのが特徴です。
具体的には、以下の図のような流れになります。

3-2. V字モデルの課題とテストの重要性
V字モデルでは、各工程が順番に進むため、後の工程で問題が見つかると修正コストが大幅に増加します。
特に、設計段階でのミスが開発終盤のテスト工程で発覚すると、大幅な手戻りが発生し、納期やコストに影響を及ぼします。
そのため、次に示すW字モデルのような手法を取り入れ、開発の早い段階からテスト設計や検証を実施することが重要です。
これにより、品質を確保しつつ、開発効率を向上させることができます。

W字モデルとは?

4-1. W字モデルの概要
W字モデルは、V字モデルの課題を解決すべく進化させたもので、開発工程とテスト工程をより密接に連携させることを目的としています。
V字モデルと異なり、設計の工程からテスト設計や検証を並行して行うのが特徴です。
具体的には、以下の図のような流れになります。

V字モデル・W字モデルの比較

比較項目V字モデルW字モデル
開発プロセス左から右に進む直線的な流れテスト工程を開発工程と並行して実施
品質確保開発工程ごとに対応するテストを行うことで品質を確保設計段階でも品質確認が可能なため手戻りが少ない
コスト初期段階の設計が重要で、後半の修正はコスト増加設計段階での問題を早期発見できるため、修正コストが低い
開発スピード設計と実装が完了してから本格的なテスト設計を実施開発とテスト設計が並行するため、迅速な対応が可能
適用プロジェクト安定した開発を求めるプロジェクト(大規模システムや安全性重視のシステム)変更が発生しやすいプロジェクト(アジャイル開発、短納期プロジェクト)

まとめ

V字モデルとW字モデルは、それぞれの特徴を踏まえ、プロジェクトの状況に応じて使い分けるべきです。
V字モデルは、ウォーターフォールモデルそのものであり各工程を順番に進めるやり方です。
一方でW字モデルは、変化に柔軟に対応し、品質を早期から高めたいプロジェクトに向いており、開発スピードやコスト効率の面でも利点があります。
どちらのモデルにも「万能な正解」はなく、重要なのは、プロジェクトの規模・リスク・納期・チーム体制などを踏まえて、最適なモデルを選択する判断力です。
そして採用したモデルにおいても、テストを単なる「終盤の作業」とせず、常に開発と連携させる姿勢が、成果物の品質を左右します。
効率的かつ確実にプロジェクトを進めるためには、モデル選びだけでなく、「テストと開発の最適な連携体制」を整えることが、最終的な成功の鍵となるでしょう。

ご愛読ありがとうございました。
次回は「テストの現場から見えた「本当の品質」とは?」についてお話します。
どうぞご期待ください。

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