業務系システムの第三者検証を広げよう(5)

第三者システム検証サービスを提供しているITベンダーが集い、業務系システムの検証業界団体設立を目指そうと「第三者システム検証情報交換会(研究会)」を開催してきました。その中で交わされたテーマを垣間見てきましたが、今回はその中でも品質に対するユニークな取組みを紹介します。
■過去記事はこちら(第一回 第二回 第三回 第四回)

システム運用から見た品質

第三者ソフトウェア検証において、システム全体の品質を考えた場合に「開発時のテスト検証だけに目を向けるのは偏った考えで、運用後のシステム品質にも言及する必要がある」とS社のK氏は指摘しています。システムが稼働した後のデータの品質も大きな問題だとの意識を持ってるからです。つまり、「データの劣化」が生むシステム品質の低下が運用における最大の課題であるということになります。なぜなら、運用=現場のIT利用であり、IT利用者の満足度がシステム品質につながるからです。

最近はあまり話題にのぼらなくなりましたが、例えば社会保険庁の年金記録の喪失、ECサイトにおける顧客情報の二重登録など、データの品質や管理が問題になる事例が後を絶ちません。こうした問題が発生する要因として、データの入力時の誤入力、システム設計時のUI(ユーザーインターフェース)不備、そしてシステム運用時に生じる管理プロセスのいい加減さなどが根底にあります。 中でもデータ入力時のあいまいさはなかなか是正されません。基本中の基本として、正しい場所に正しいデータが入力されているかがあります。例えば最初のカラムは顧客番号、次に姓名、性別、年齢、住所が入るとして、カラムごとに正しいデータ属性で入力されているかが問題となります。データエントリー会社が入力処理を行うのであれば必ずベリファイ作業があるため、データの精度は限りなく100%に近づきますが、専用オペレーターではない一般職員が入力したデータの精度には限度があります。「間違ったデータを入力すればシステムは正しく間違う」ことになります。

できるだけ正しい入力を促すには入力画面のUI設計が大きなウェイトを占めます。また、データの運用・管理プロセスの構築も欠かせません。開発部隊が気付かない画面のUI・UX(ユーザーエクスペリエンス)といったユーザビリティは第三者ソフトウェア検証サービスの中でカバーできるのです。ただ、運用・管理プロセスの作成は、マスターデータの統合など組織的な取り組みが必要となりますから、第三者検証だけで済む問題ではありません。組織全体での取り組みが必要になります。

運用を含めたシステム全体の品質向上を考えた場合、データの品質を入力時から維持できるシステム設計や開発が必要であること、入力時のチェック機構を整えること、データ品質を維持向上させるデータクレンジングなど運用プロセスを構築することが重要になる事が分かりました。そこには第三者ソフトウェア検証サービスがかかわる部分と、組織全体で取り組むものと分けられますが、第三者検証によるシステム品質強化は十分可能であるといえます。

次回は、研究会のその後と第三者検証サービスの可能性に目を向けたいと思います。

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